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崩壊する教育現場 [教育]

今、小学校・中学校が崩壊しつつある。いろいろな問題があるからだ。モンスタペアレント問題と無気力・無能教員問題だ。

先日、私の知人で兵庫教育大学を卒業し、今年で教員歴12年目に突入したS氏と久方ぶりに偶然に出会った。S氏は所謂、熱血教員で保護者からの信頼も篤い。というのも、前の職場の小学校を離任する際に、保護者が教育委員会に押し掛けて、異動を取りやめるように1000人近い署名を集めて提出したほどだ。たしかに、過去に聞いた彼の授業の進め方はユニークでもあり、面白い取り組みが多い。受験用の詰め込み教育でも、丸暗記教育でもない、自分の頭で考える授業を行う。しかも、子供の好奇心を刺激するように構成されている。ただし、その分、彼の残業と家に持ち帰りの授業準備は多く、奥様は我慢を強いられているようだが。

そんな知人がこぼす、今の小学校の教育の現状は恐ろしい。

『モンスターペアレント』という言葉を活字として、そしてマスメディアを通しては知っていたが、実際に、その対応をしている現場の教員の声を聞くと想像以上であることがわかった。

彼が分析するモンスターペアレントの類型は下記の通りだ。

  1. 夫はバブル期入社のサラリーマン。
  2. 妻は同世代で正社員やパートでフルタイムで働いている。
  3. マンションや建売を購入し住宅ローンの返済中である。

なぜか。それを彼はこう分析する。小学校に怒鳴り込んでくる父親の多くがバブル期入社組といわれる世代で、その思考の基本は「我がまま」「自己中心的」「忍耐力ゼロ」「無責任」というものだ。しかも、その多くが企業では中堅社員として活躍しているサラリーマンである。

では、なぜそうなるのかといえば、いろいろ理由はあるだろうが、私と彼とが考えた理由は下記の通りだ。

  1. 中堅社員として社内で責任のある地位につき、ストレスがたまりやすいために、キレやすい。
  2. バブル期入社で当初は努力しなくても結果が出たが、バブル崩壊後は一転して苦労しているために、キレやすい。
  3. バブル期に住居を購入し、資産価値が減少した住居に多額の住宅ローン返済があるために、不満が多いために、キレやすい。
  4. バブル期の大量採用組だが、バブル崩壊後に人員削減の対象とされたことから他人を蹴落としてでも生き残るという自己中心的な人格が形成された。

実際、彼の話では学校に怒鳴り込んでくる親の大半が、30代後半から40代前半だという。確かに、小学生の保護者というと、このあたりの年齢が多いのは確かだ。そして、この怒鳴り込んでくる親が増え始めたのは、3年程前からで、上記の条件は全く変動がないという。結局、バブル期入社組の夫婦が学校に怒鳴り込んでくるというパターンはこの3年以上同じだという。それ以外の年齢の保護者も当然いるのだが、怒鳴り込んでくるのは稀だという。

しかし、昨年ぐらいから新しい傾向もあるという。それは児童の両親ではなく、祖父母が怒鳴り込んでくるというケースがあるというのだ。多いのは小学校の低学年で、両親が30代の前半くらいである場合が多いという。彼に言わせると、両親は超氷河期を経験し、辛酸を舐めているので今更、少しのことでキレたりはしないのだが、その親世代である団塊世代は定年を迎え、元気は有り余っているし、孫はかわいいで盲目的に暴走するのだという。

確かに、その傾向は学校以外でも見かけることがある。しかし、なぜ、そうなるのだろうか。団塊世代といえば、成熟した大人であるはずだ。とはいえ、病院などでも暴走して暴れる団塊世代というものが取り上げられる時世である。不思議ではないとも言えるのだが、どうして、暴走するのか。

これを考えるには、まず、団塊世代の置かれている社会的な位置を考える必要があるだろう。団塊世代は社会で活躍している人材も多い。今、一部上場企業の役員の多くがこの世代で占められている。しかし、人数が多いだけに、すべてが満足がいく境遇であるわけではない。肩叩きにあい、早期退職や窓際から退職したという人も多いだろう。団塊世代はいつも競争が付いて回る世代だった。人数の多い世代の宿命ともいえる。とはいえ、その競争の中で自己練磨をしてきたはずであり、その子供世代である団塊ジュニア世代が超氷河期の就職難のなかでフリーターなどとして苦労しているのと同程度の苦労を経験してきて、人間として熟成されているはずなのだが、なぜ、暴走する団塊世代が多いだろうか。その分析を行うと、キレる団塊世代に多いのが現役時代にサラリーマンであった、所謂、会社員であるということだ。というよりも、自営業などであれば、定年制はなく、終生現役であるから、それらの団塊世代は今も現役で仕事に追われているから、暴走もあまりできないのかもしれない。その反面、サラリーマンであれば、定年後は会社からも離れ、自由の身になる。会社勤めをしていれば、会社大事、職が大事で、慎重に問題を起こさないように努めていた人も、会社を離れ、免職や首の危険性もなくなると、慎重に問題を起こさないように努める必要もなくなり、暴走するということなのだろう。

そのような理由からか、今、小学校ではバブル期入社組といわれる世代の両親と、団塊世代といわれる祖父母がモンスターペアレントとして暴れまわっているようだ。

と、ここまでは、児童の保護者やその家族側の問題点である『モンスターペアレント』について分析してきたが、それだけが理由で教育現場が崩壊しているわけではない。

クレームが出るということは当然、クレームをつけられる問題がそこにあるということだ。確かに理不尽な要求も多いのは確かだが、何もないのに、一方的に片方がキレるわけではない。

知人のS氏は言う。「レベルの低い教員が多いのは事実。保護者が不安になり、文句を言いたくなるのも理解できる」と。彼がレベルが低いと評価する教員が増加しているという事実がある。それは、団塊ジュニア世代が小学校に上がる前後に、大量に教員を採用し、その後、子供が数が減少すると、教員の採用を控えたという経緯があると彼は言う。その結果、団塊世代が退職するこの時期になると、30代から40代の中堅教員が少ないために、50代後半の団塊世代とその後の50代の教員が一線からいなくなると、大きな空白が発生するのだという。そのために、経験不足の20代の教員ばかりが小学校に集まり、50代後半の校長と教頭に、50代前半の学年主任に20代の担任という構成の小学校が多いのだと言う。そのため、教育のノウハウが伝わりにくく、50代の学年主任と20代の担任との間ではコミュニケーションもとりにくく、教育に対する考え方も異なり、しかも、今の20代の教員は極力仕事を避けてん逃げ回る傾向が強く、夏休みや冬休みの当直や水やりなども敬遠するために、子供たちが動物や植物を育てるという経験をさせてあげられにくい傾向にあるというのだ。実際、昨年、彼は夏休みに毎日、登校して、児童菜園の水やりをして、動物のえさと水の世話をして、ヤギの散歩に校庭をランニングしていた。しかし、他の若い20代の教員は誰一人として登校しない。登校するのは決められた所定の日だけで、その日でさえ、エアコンの効いた職員室から一歩も外に出ない。そのため、園庭の掃除も草刈もすべてを彼と用務員の二人で行い、手伝ってくれるのは教頭と校長だったという。校長や教頭、そして、学年主任の彼が暑いさなか、園庭で作業をしているのを職員室の彼らはどう思っているのだろうか。

それもそうだが、授業の内容も浅い。なぜなら、下準備をしないからだという。当然かもしれない。夏休みに水やりするのも断るような教員が、自分の授業だからといって授業の準備に時間を割くだろうか。教員用の教科書だけを持って授業をする。学生の質問に答えられないと、「そんなことは知らなくてもいい」と回答を拒否する。学年主任の彼が、今では下準備をしたものを20代の教員に一週間前には渡しておいて、授業までには目を通しておくように指示している。それでも目も通さずに授業に臨む教員も多いのだという。彼は「どうして、今の20代の連中はああなんだ」と嘆く。

しかし、これは、教員だけではない。身の回りでも増加している。私が前にいた会社の先輩と夕食を一緒にした際に、その先輩は今では課長という管理職だが、20代の若手の不甲斐なさ、やる気のなさを嘆いていた。プライベート重視で、仕事はオマケのような人生設計についていけないとこぼしていた。

学校の教員も同じなのだろう。プライベート重視で、仕事はオマケなのだろう。だから、下準備もしないし、目も通さないで授業に臨めるのだろう。それでは、とてもではないが、保護者からの信頼など勝ち得れるわけがない。得られるのは軽蔑の視線くらいではないか。そんな教員に対して冷静にものが言えるだろうか。

たとえば、こんな話もあった。保護者がクレームを言いに来た際に、担任が、その子の名前を覚えていなかったことから、火がついたという話だ。一クラス30人くらいしかいない小学校の担任が、自分の受け持ちの児童の名前を2か月以上経っても覚えていないというのは考えられないことだ。しかし、そんなことは今の小学校では日常茶飯事であるらしい。

教員の質(やる気)の低下と保護者の不信感が相乗効果で学校が崩壊していっているのではないか。そう思えて仕方がない。この立て直しも政治の役割だ。

教育問題は避けては通れない政治課題だと思うのだが。それに対する具体的な施策は与野党を問わず、あまり聞かれないように感じる。これでいいのか。


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