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父と宮崎駿、中沢啓治 [日本の不幸]

宮崎駿、日本を代表するアニメの巨匠だ。


今回、零式戦闘機の開発者、堀越二郎を主人公にしたアニメーション映画「風立ちぬ」を発表。


そして、同時に引退を表明したことは記憶に新しい。


さらに、マスメディアに露出する宮崎駿は、反戦言動を繰り返し、戦争経験者としていろいろ語っている。


しかし、そんな宮崎駿を批判する人がいる。


そのなかに私の父もいる。


父は昭和9年生まれで、終戦の翌年に小学校を卒業した。


空襲も、疎開も経験している。父の兄(私からすると伯父)は出征し、戦死ではなく病死した。戦地で発症し、帰国後亡くなったがゆえに、靖国神社には祀られていない。父の父(私からすると祖父)は終戦の翌年、昭和21年の3月に亡くなった。病没とも謀殺ともいわれるが、謎の死を遂げている。


ゆえに、父は小学校卒業と同時に孤児となった。


そんな父は戦争について語らない。最初はつらいから語らないのかと思っていたが、最近になって、そうではないことがわかった。


父に言わせれば、「戦争を語る資格はない」ということになる。「戦地を知らない人間に戦争は語れない」ということだ。「空襲で逃げ回り、疎開したからといって戦争体験があるなどとは言わない」とも言った。


そんな父に言わせると、宮崎駿や中沢啓治(『はだしのゲン』の作者)の語る戦争論は失笑モノになるのだろう。


父は中沢について「原爆だけを語れ。被爆者としてそれは必要なことだ。非人道的な戦争犯罪を告発することは必要だ。しかし、戦争を語るな」と評する。


同じことを父は宮崎駿についても評した。


「零式戦闘機の開発者の伝記をアニメーションにするのはいい。だが、それに関連して、戦争を語るな。知りもしないことを語るのは虚言だ。アニメーションという非現実世界、虚構の世界で生きているから、虚言が許されると思うならアニメーションは日本が世界に誇る『負の文化』だ」

と。


昭和14年生まれの中沢啓治、昭和16年生まれの宮崎駿。


父に言わせれば、

「昭和9年生まれですら、戦争の記憶など、空襲と疎開だけだ。中沢の原爆の記憶は貴重だが、そのあとの付け合せのような旧軍批判は知ったかぶりだ。宮崎に至っては戦争の記憶などないはずだ。後から知識として蓄えた事実と虚妄を合わせて経験者ぶって話すのは嘘つきだ。見たものを伝えることは重要だが、聞いたことを見てきたかのように話すのは嘘つきだ」

と、なる。実際、そんなものだ。二人とも日中戦争中の生まれで、大東亜戦争に関して言えば、2歳から6歳の戦争体験と、ゼロ歳から4歳の戦争体験ということになる。記憶があるほうがおかしい。まして、戦地にも行ったことがない人間が戦争を語るべきではないのは当然だ。


父は疎開の話や空襲の話はする。あと、「予科練に行きたかった」と話していたことはあったが、戦争については語らない。


それが父の節度なのだと思う。父の言う「節度のない輩」とは、あの二人以外に誰がいるのだろう。
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コメント 15

ソニックマイヅル

お父様のお話、感銘を受けました。この度は家のティコに対しまして心温まるコメント頂きまして誠にありがとうございました。
by ソニックマイヅル (2013-10-01 14:07) 

元気

「節度のない輩」 少なくないです。
(有名無名含めて)あらゆる業界にいらっしゃいます。
「節度がない」 ゆえに、今(戦後民主主義)に迎合できるのだと思わずにはいられません。


小冊子『熱風』7月号特集からも、氏の思考の安直さ偏向が窺えます。
http://www.ghibli.jp/docs/0718kenpo.pdf

72歳にもなって、こんな青い思考しかないこと。
恥知らずだと思いますし、それを賛美する人々の多さに日本の未来の危うさを思います。





by 元気 (2013-10-01 21:21) 

やおかずみ

ご訪問ありがとうございました。
by やおかずみ (2013-10-02 11:46) 

mwainfo

今は亡き私の父は、わざわざ志願をして、ビルマ最前線へ将校として出征していきました。過酷な戦闘をくぐりぬけ、奇跡的に帰還しました。子供たちに戦争について語ることはありませんでした。
by mwainfo (2013-10-03 16:17) 

ゆゆ

私の父は昭和3年、母は7年生まれで未だ存命ですが
アニメ好きの私がナウシカに夢中になった時に言った言葉。
「宮崎は赤だ」
未だにNHKに出た頃の池上彰をひと目見るなり「こいつは左翼崩れだ」と言い当てました。
世の中まだ誰も気づかない時でした。
父の長兄はサイパン島玉砕で戦死。
遺骨も帰ってきていません。
自分も年が足らずに予科練に行けず終戦を迎えたと言っていました。
長兄が戦地から送ってくる手紙を心待ちにしていたこと、
真綿の布団を被って空襲から逃げ回ったこと、
戦後の食糧難で大変苦しんだこと。
今、伝えなけらばならないことを私の娘たちに聞かせています。

宮崎駿はアニメだけやっていれば良かったのです。
桑田佳祐も同じ。

戦争、政治を語る資格など全くありません。
by ゆゆ (2013-10-04 14:02) 

いで

yukikaze さん
お久しぶりです。
読ませていただいて、なるほどと思いました。
たしかに、虚構の世界を描いていかにも経験者ぶるのは、
今後も知らないうちに大きな問題になっていきそうです。
by いで (2013-10-05 02:29) 

yukikaze

皆様、nice!ありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。
by yukikaze (2013-10-07 10:38) 

yukikaze

ソニックマイヅル様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

愛犬の旅立ちからの虚脱感はなかなか拭い去れないと思いますが、お心を強く持っていただきたいと思います。
by yukikaze (2013-10-07 10:44) 

yukikaze

やおかずみ様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。
by yukikaze (2013-10-07 10:45) 

yukikaze

mwainfo様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

あの方面の作戦で生きて帰還されたということは相当なご苦労だったと思います。それでも語らないのが敗軍の将ということだと思います。ペラペラと負けた先の戦争について語る人がいますが、本当に苦労した人は過去の苦労を語らないものですから、虚言だと思わずにはいられません。まして、年齢が合わない人たちの話や辻褄の合わないことを言う人は余計です。
by yukikaze (2013-10-07 11:06) 

yukikaze

元気様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

そうですね。彼を賛辞する空虚な言葉の羅列がこの国に大惨事を招きそうだと思うこのごろです。
by yukikaze (2013-10-07 11:07) 

citron

こんばんは~お久しぶりです。
いつもありがとうございます。
お父様のお話、心に染み入りました。
素敵なお父様ですね。
by citron (2013-10-07 19:18) 

yukikaze

ゆゆ様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

そうですね。戦争を知らない人ほど知ったふりをして説教を垂れるようです。知っている人は語りたがらないものだと私は思っています。
by yukikaze (2013-10-08 17:02) 

yukikaze

いで様、いつもコメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。

リアルの世界で経験していない人の話は展開が豊かで面白いですが、事実はもっと切実で派手な展開などなく聞いていて詰まらないと感じることのほうが多いですね。

虚構の世界にどっぷりと浸かって、なんでもありの完成になってしまうと、嘘を吐くことにも抵抗感がなくなるのかもしれません。すべてのクリエイターがそうではないと思うのですが、彼らの場合は何かが足りないクリエイターだったのだと思います。
by yukikaze (2013-10-08 17:16) 

yukikaze

citron様、コメントありがとうございます。これからもよろしくお願い申し上げます。
by yukikaze (2013-10-08 17:17) 

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