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大学の生き残り戦略を考える [教育]

少子化の結果、この数年、学校法人の経営危機がニュースとして報じられるようになった。特に大学は危機的な状況で、中学校・高校などを系列化するなどして学生の囲い込みを始めている。

しかし、この戦略に私は疑問を感じる。系列化を行うのはいいが、結果的にエスカレーター方式といわれる状況が生まれているのだ。大学のブランド力で幼稚園から囲い込み、小学校、中学校、高等学校、そして大学へと進むコースを作るのだが、ここに落とし穴がある。

というのも、人間は弱い生き物で、安楽な道があれば安楽なほうへ流れていってしまうのだ。とある私立大学では附属の幼稚園に入園し、大過なく卒業し、保護者の経済力さえともなえば、小学校へ進学し、そこでも、大過なく卒業すれば、中学へと進み、最後には大学を卒業するのだが、このような環境で勉学に励むだろうか。勉学だけではない、スポーツなども同じだ。大過なく卒業さえすれば、進学できるとなると、向上心が失われてしまうのは致し方ない。

受験の危機感から勉学に励んだという記憶のある方ならわかると思うが、かりに、その危機感がなくても同じ程度の努力を勉学に惜しまずに投入できたかどうかを考えてもらいたい。

それに、ここまで系列でエスカレーターにするのなら、幼稚園から大学までをひとつの学校にして、1年生から19年生までにしたらどうだろう。

そんな状況で、大学まで進学し、卒業した学生が、社会に巣立っていく。企業はそのような人材が欲しいだろうか。努力をした経験があまりにも少ない学生が社会に出て、努力して目標を達成することが可能だろうか。というよりも、目標を達成した満足感、充足感、達成感を感じたことのない人間が22歳になって、目標を目指して努力ができるだろうか。はなはだ疑問だ。

社会で活躍しない卒業生をいくら輩出しても意味がない。なぜなら、全入時代の今、大学を選択する基準は何だろうか。「偏差値」などというのは過去の遺物でしかない。今の基準は、社会での活躍度だ。たとえば、直近の就職率および、就職先の良し悪しが次の年の入試の倍率に影響するという時代になっている。世の中にはネットをはじめいろいろな情報の媒体が存在し、そこから容易に大学の情報が入手できる時代だ。願書を取り寄せる時点で、受験生は大学のそれらの情報を収集し分析し、将来、自分が進みたい業界に強い大学、行きたい企業に卒業生が多いのはどこの大学か、という情報を収集して受験生は願書を出す。

そういった時代に、幼稚園や小学校からの系列化による囲い込みは有効な策と言えるのだろうか。大学経営者に告げたい。大学での教育内容と、社会で活躍できる能力が身につくカリキュラムができていますか。それをなくして、どれほど囲い込みをしても無駄です。系列校からのお荷物だけを引き取る大学でいいのですか。系列校の上位者が他の大学を受験していませんか。調査してみるべきです。もし、上位者が他の大学を受験し、他の大学に進学しているなら、あなたの大学は系列校の学生にさえ、見放されている状態だということです。反対に、他の大学の系列の学生が受験して、進学してくる大学であるならば、経営は順調とまではいかなくとも、カリキュラムや大学の設備などいろいろな部分に学生は魅力を感じているのです。弛まぬ努力を続けていけば、生き残れるはずです。

一言でいいましょう。大学は就職予備校なのです。高度な知識を一握りの学生にだけ伝授する機関ではないのです。それは一部の上位大学の特権事項なのです。その一部の上位大学ではない大学は、よりよい企業に就職するのに必要な能力を身につけ、企業から即戦力になる人材を輩出する大学という名誉を得ることが生き残りのための最重要戦略なのです。もしくは、学生起業家を育てるカリキュラムを組み、多くの青年実業家を輩出する大学としての名誉を得るかです。

そのためには、よい教授陣が必要です。法学部なら、難解な法理を教え、いろいろな学説を教える教授よりも、企業社会で必要な法律の内容と実社会での活用、そして、判例などから、企業人としてどう判断することがより良いのかを教えられる教授の方が必要なのです。それは経済学部でも経営学部でも同じです。

大学はよりよい人材を揃え、学生のやる気を引き出させる教授陣と、社会に出たときに即戦力となりうる能力を教えられる教授陣を揃えなくてはなりません。大学の教授は偏屈で難解な用語と、奇抜な服装と発言で、大学教授であることを誇っていた時代と今は違います。大学の教授は明朗で常識人で、洗練された服装と、常識的な発言、誰にでもわかる用語で学問を説き、あらゆる媒体を用いて、視覚的に、聴覚的に、そして、触覚的に学生にアプローチのできる人材でなくてはならないのです。

それらの人材を揃え、優秀な即戦力の卒業生を輩出することが真の勝ち組大学ではないでしょうか。


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