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裁判員制度、強盗強姦罪懲役15年を考える [コラム]

 青森地裁で9月4日、裁判員制度のもと、強盗強姦事件が裁かれてた。求刑15年に対して、懲役15年の実刑が下った。

 それについて、産経新聞が《【裁判員判決】強盗強姦罪懲役15年 「軽すぎる」「男性社会の視点」》という記事を掲載した。その内容は下記の通り。
 《検察側の求刑ですら軽すぎる》《被害者の心境を考えれば、死刑に相当するのではないかとさえ思う》。4日、青森地裁で求刑通り懲役15年の判決が言い渡された全国3件目の裁判員裁判。「あなたが裁判員ならどのような判決を言い渡すか」について読者の意見を募ったところ、過去2件の裁判員裁判を大きく上回る件数が寄せられた。そのほとんどすべてが、強盗強姦の被害に遭った2人の女性の心情をおもんぱかるものだった。
 《女性にとって強姦されるということは、死よりも辛く、悔しく、恥ずかしく、耐えがたい苦しみです》
 このようなメールを寄せた女性は《検察の求める懲役15年ですら、短すぎます》と、強盗強姦罪の法定刑の上限である無期懲役を選択。《強姦罪に対する判決の現状は甘すぎます。それは、男性社会の視点でしか裁かれていないからです》としたうえで、今回の事件の裁判員6人のうち5人を男性が占めていたことに疑念を呈した。
 ただ、読者からの意見を見る限り、量刑判断に男女の性差はあまりなかった。大阪府内に住む61歳の男性は《社会復帰させるべきではない》と無期懲役が相当と判断。《性犯罪は再犯率が高い》と指摘した20代の男性も同じ結論だった。
 一方で法科大学院に通う女性は《被害者の方々の想像を絶する苦しみを考えたら、被告には一生刑務所に入っていてほしいと思います》としながらも、《殺人や傷害致死で裁かれる被告との刑罰の均衡を考えたら、悔しいけれど懲役12年程度が上限かと考えました》という結論に至っていた。
 今回、弁護側は被告のために酌むべき事情の一つとして、母親と死別し祖母に育てられた被告の生い立ちを挙げた。だが、理解を得るのは難しかったようだ。
 《育った環境を理由に酌量を求めては、同様の環境に育つ者が犯罪予備軍とされることを認めることになるのではないだろうか》。こう疑念を示した男性は、懲役15年が相当という意見。《更生を援助する環境が犯行の一因でもある成育環境と変わり映えしないのに、どう更生させるというのか》という36歳の女性は《少なくとも被告が今まで生きてきた年数》の刑を望んだ。
 また、「懲役5年が適当」との弁護側の主張も、48歳の男性は《被害者の心の傷は5年で癒されるものではない。なのに被告の更生が5年で行えるというのは虫がよすぎる》。《被告への同情と更生も期待できそうなので、求刑から2割減刑して懲役12年》とした京都市の43歳の男性も《懲役5年というのは、あまりにも軽いように思います。かえって逆効果だったのでは》という見方だった。
 通常、弁護側が具体的な数字を挙げて量刑への意見を述べることは少ない。主任弁護人は「正しいかどうか分からない」「裁判員の参考の一助になれば、と思った」と話したが、これには全国初の裁判員裁判で弁護側が「求刑は不当に重い」と主張するにとどめたことに、裁判員の一人が「弁護側は何年が妥当だと思うのか参考に知りたかった」と感想を述べたことも影響したのかもしれない。
 始まったばかりの裁判員制度。弁護方法だけでなく、被害者のプライバシー保護や裁判員の守秘義務のあり方をめぐっても、まだまだ試行錯誤は続くのだろう。

 この事案に関して、《検察の求める懲役15年ですら、短すぎます》という心情はよくわかる。とはいえ、最高刑である無期懲役が現状では難しいことは、判例の積み重ねであり、《殺人や傷害致死で裁かれる被告との刑罰の均衡を考えたら、悔しいけれど懲役12年程度が上限かと考えました》という意見も妥当なものだ。実際、判例や他の犯罪との兼ね合いと現状の刑法の規定から判断すれば、懲役15年でも重い量刑ともいえる。
 というものの、刑法の規定そのものが軽すぎるという気が私はする。強姦という犯罪は、その女性に終生にわたって苦しみを与え続ける以上、継続的な傷害とも言えるし、殺人の痛みは一瞬だが、この手の犯罪の痛みは終生にわたる。時間の経過によって回復できるかどうか、それすら定かではない。また、被害者が黙って死を選ぶことすらあるという現実を考えると、殺人と同等、もしくはそれ以上の犯罪と考えるべきではないか。
 今回の公判の場合は、量刑は妥当であると考えるものの、それは、日本が近代国家である以上、『罪刑法定主義』の束縛を受けるからだ。現行の刑法では、強盗強姦罪は、刑法第241条に規定があり、そこには下記のような条文がある。
第241条 強盗が女子を強姦したときは、無期又は7年以上の懲役に処する。よって女子を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する。
 これを改正しない限り、最高でも無期以上にはなりえない。世間には「無期懲役」と「終身刑」を勘違いされるケースがあるが、「無期懲役」は期限を定めない懲役であって、「期限のない=死ぬまで」である終身刑とは異なる。「終身刑」は特別な恩赦でもない限り、社会復帰はないが、「無期懲役」の場合は、社会復帰がありうる。10年以上服役すれば仮釈放があるからだ。とはいえ、無期であるので、終身保護観察などに付される。また、現在の日本では仮釈放は20年以上の服役者しかいない。そのため、現在の日本では無期懲役は「懲役20年+α年+終身保護観察」であるといっても過言ではない。しかし、20数年で社会に出てくる。今回の事案では加害者である田嶋靖広は22歳である。順当にいけば40代半ばから50歳前には社会に出てくることになる。再犯率の高い、性犯罪であり、その被害が重大である強姦事件において、それが妥当であるのかどうか。しかも現行では仮釈放までの期間が延びてきて、10年程度で仮釈放であったものが、やっと延長されて20年+α年となった。しかし、今回のように若い加害者の場合、それでは短い、危険性が高まるという問題がある。とはいえ、仮釈放には有識者で構成される委員会の審理を経る。そのあたりで、仮釈放がどのように運営されるかにもかかっている。
 個人的には、刑法の改正などで、最高刑に死刑を含めるべきだと考えている。死刑制度に対しては反対する運動もあるが、現行、日本では死刑制度を維持しており、遺族感情、被害者感情を考慮すれば、死刑もやむを得ない凶悪事件が発生している以上、制度を維持し、さらに、その範囲を拡大する必要性がある。もしくは、完全な終身刑、仮釈放を認めない無期懲役という制度を設けるべきだ。または、性犯罪に関して、腐刑(去勢)などの刑罰を設置することも検討してもよいかもしれないと考える。
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yukikaze

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by yukikaze (2009-09-07 17:55) 

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